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億り人テスタ氏が明かす、フジテレビ株勝利の思考法 ― プロが仕掛けた「予測」と「答え合わせ」の投資術

戦略

「なぜ、あのタイミングでフジテレビ株を買ったのか?」

100億円以上を稼ぎ出した伝説の投資家テスタ氏が、人気番組『どっちで増やしまSHOW』に出演し、その鮮やかな投資戦略の核心を自らの言葉で語った。
R-1王者・友田オレさんの素朴な疑問をきっかけに明かされたのは、大株主の心理を読み解き、市場のルールを巧みに利用する、プロならではの思考プロセスだった。

戦略の出発点:「株主総会後の買い増し」という予測

テスタ氏がフジテレビ株で仕掛けた戦略は、株主総会という一大イベントの直後から始まった。
モノ言う株主として知られる村上ファンドの動向を注視していた彼は、総会後の状況を見て、こう予測したという。

「僕が見てて、株主総会が終わってから、村上ファンドが買い増してくるんじゃないか、みたいなのがあって」

この予測は、単なる勘ではない。
テスタ氏はその根拠として、「(総会後の)株価が、以前村上ファンドが買っていた時の株価と、まだ同じぐらいの水準だった」ことを挙げた。
つまり、目的達成への執念が強いことで知られる村上ファンドにとって、まだ「買いやすい価格帯」であり、さらなる行動に出る可能性が高いと分析したのだ。

しかし、プロの世界では予測だけで全資産を投じることはない。
重要なのは、その予測が正しいかどうかの「裏付け(答え合わせ)」だ。
テスタ氏は、その答え合わせのツールとして、市場の公的なルールを利用した。

【深掘り解説①】答え合わせの鍵「大量保有報告書」という名のタイムリミット

テスタ氏が戦略の核に据えたのが「大量保有報告書制度」である。
これは、市場の公平性と透明性を保つために金融商品取引法で定められた重要なルールだ。

■ 大量保有報告書制度とは?

この制度には、大きく分けて2つの報告義務がある。

  1. 5%ルール(新規報告)
    投資家がある上場企業の株式を買い進め、その保有割合が初めて5%を超えた場合、5営業日以内に金融庁へ「大量保有報告書」を提出しなければならない。これにより、市場は「誰が、どのような目的で大株主になったか」を初めて知ることができる。

  2. 1%ルール(変更報告)
    すでに5%以上を保有する大株主が、そこからさらに保有割合を1%以上増やしたり減らしたりした場合、同じく5営業日以内に「変更報告書」を提出する義務がある。

■ テスタ氏はどう活用したか?

テスタさんは、この「5営業日」という明確なタイムリミットを、自らの予測を検証するための装置として最大限に活用した。

もし自分の予測通り村上ファンドが買い増しているなら、5日以内に必ず「大量保有報告書」が出る。
それを見てからでは他の投資家も動き出すので遅い。
だから、報告書が出るだろうと見越して先に買う。
もし期限内に報告書が出なければ、自分の予測が外れたということだから、すぐに売却すればリスクは限定的だ。

この戦略により、彼は不確実性をコントロールし、リスクを限定しながら、情報が公になる前にポジションを取ることで大きな利益を狙うことができたのだ。
これらの報告書は、金融庁のウェブサイト「EDINET」で誰でも無料で閲覧することができる。

【深掘り解説②】なぜ村上ファンドは買い増すのか? 保有率で変わる「株主の影響力」という武器

では、なぜ村上ファンドは莫大なコストをかけてまで、1%、また1%と保有比率を高めることにこだわるのだろうか。
それは、株主の権利が、保有割合に応じて段階的に強力になるからだ。

■ 保有率と株主の権利

株主は会社のオーナーであり、その権利は保有する株の数に比例する。

  • 1単元(100株など):議決権の行使
    株主総会に出席し、議案に賛否を投じる基本的な権利。

  • 総議決権の1%以上:株主提案権
    「配当を増やせ」「あの取締役を解任しろ」といった議案を、自ら株主総会に提出できる。経営方針に直接切り込むための最初の武器となる。

  • 総議決権の3%以上:帳簿閲覧請求権、株主総会の招集請求権
    会社の会計帳簿を直接閲覧し、経営の透明性をチェックできる。経営陣にとっては、不正や非効率を追及されかねない非常に厄介な権利だ。

  • 総議決権の3分の1(約33.4%)超:特別決議の拒否権
    合併や定款変更といった会社の根幹に関わる重要議案を、単独で「NO」と言える。会社の大きな舵取りをストップさせられる絶大な力を持つ。

  • 総議決権の過半数(50%)超:普通決議の可決権
    取締役の選任・解任などを単独で決めることができ、事実上、会社の経営を支配できる状態になる。

「モノ言う株主」は、こうして段階的に保有率を高め、より強力な権利を背景に経営陣と交渉する。
彼らにとって、買い増しは単なる投機ではなく、企業価値向上という目的を達成するための、極めて合理的な戦略なのである。

テスタ氏の投資術は、こうした企業の背景、大株主の心理、そして法律上のルールまでを複合的に読み解き、一つのシナリオとして組み立てることで成り立っている。
彼の言葉から垣間見えたのは、市場の奥深さと、それを読み解く知的なゲームの面白さであった。

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