FXの自動売買(EA)を始めるには、世界標準ソフト「MT4(MetaTrader 4)」が必要です。
本記事では、楽天証券のMT4を使って、プログラムの作成からバックテスト(検証)、そして実運用までの全手順を解説します。
Contents
第1章:環境構築(最初にやらないと動かない設定)

MT4をインストールした直後の状態では、正確なテストができません。以下の3つの設定を最初に行います。
1. 過去データの表示制限を解除する
初期設定では、チャートに表示できるローソク足の本数が制限されており、長期間のテストができません。
- メニューバーの 「ツール」 > 「オプション」 をクリック。
- 「チャート」 タブを選択。
- 「ヒストリー内の最大バー数」 と 「チャートの最大バー数」 の欄に、9999999999 と入力してOKを押す(自動的に最大値になります)。
- MT4を一度再起動する。
2. 過去データをサーバーからダウンロードする
テストしたい通貨ペアの過去データ(ヒストリカルデータ)を取得します。
- テストしたい通貨ペアのチャートを開く。
- 時間足をテストしたい足(例:M5)に変更する。
- キーボードの 「Home」キー を長押し(またはマウスで左へドラッグ)して、チャートを過去へ遡らせる。
- これ以上動かなくなるまで遡れば、データのダウンロードは完了です。
3. 隠れている通貨ペアを表示する
楽天MT4は、一部の通貨ペア(AUDCADなど)が初期状態では非表示になっています。
- 画面左上の 「気配値表示」 ウィンドウの上で右クリック。
- 「通貨ペアリスト」 を選択。
- フォルダ(Forexなど)を開き、グレーになっている通貨ペアを ダブルクリック して黄色(表示状態)にする。
第2章:EAの作成(プログラミング)

MT4付属のエディタを使って、自動売買プログラムを作成します。
1. MetaEditorの起動
- ツールバーの 「黄色い冊子のアイコン」 をクリック(またはキーボードの F4 キー)。
2. 新規作成
- 左上の 「新規作成」 ボタンをクリック。
- 「エキスパートアドバイザ(テンプレート)」 を選択して「次へ」。
- 名前(例:My_EA_v1)を入力して「完了」。
3. コードの記述とコンパイル
- 画面に表示されたコードを全て消し、作成したロジックのコードを貼り付ける。
- 画面上部の 「コンパイル」 ボタンをクリック。
- 画面下の「エラー」タブに 「0 errors」 と表示されればEAの完成です。
- ナビゲーターウィンドウのエキスパートアドバイザの欄にファイルが追加される。
第3章:バックテスト(過去検証)

作成したEAが過去の相場で勝てていたかを確認します。
1. ストラテジーテスターの設定
メニューの「表示」>「ストラテジーテスター」でパネルを開き、以下を設定します。
- エキスパートアドバイザ: 作成したファイル(ex4)を選択。
- 通貨ペア: 検証したいペアを選択。
- 期間: ロジックに合わせた時間足(M1, M5, H1など)。
- モデル: 「全ティック」(※必須。これ以外だと精度が低く信頼できません)。
- スプレッド: 「10」〜「30」などの固定値を推奨。
- ※「現在値」にすると、土日や早朝にテストした際にスプレッドが広すぎて、不当に悪い結果になるため。
2. テスト実行
- 「スタート」 ボタンを押す。
- 終了後、下部の 「グラフ」 タブで資産の推移を確認する。
- 「レポート」 タブで詳細な数値(純益、プロフィットファクターなど)を確認する。
第4章:最適化(最強の設定を探す)

パラメータ(利確幅やRSIの感度など)の最適な組み合わせをPCに自動計算させます。
1. 最適化の準備
- ストラテジーテスターの 「最適化」 にチェックを入れる。
- 「ビジュアルモード」 のチェックを外す(処理速度向上のため)。
- 「エキスパート設定」 ボタンをクリック。
2. パラメータ範囲の指定
「パラメーターの入力」タブで、テストしたい項目にチェックを入れ、数値を指定します。
- スタート: 調査開始の値(例:10)
- ステップ: いくつ飛ばしで調べるか(例:5)
- ストップ: 調査終了の値(例:50)
3. 結果の分析
スタートを押して計算が終わったら、「最適化結果」 タブを開きます。
「損益」 のヘッダーをクリックして利益順に並べ替え、最も成績が良い(かつグラフが安定している)設定値を採用します。
第5章:実運用(デモ・リアル稼働)

検証で合格したEAを、実際に動くチャートにセットします。
1. チャートへのセット
- 稼働させたい通貨ペアのチャートを開き、時間足を合わせる。
- 「ナビゲーター」パネルの「エキスパートアドバイザ」から、EAをチャート上にドラッグ&ドロップする。
2. パラメータと許可設定
設定画面が開くので、以下の確認を行います。
- 「全般」タブ: 「自動売買を許可する」 にチェックを入れる。
- 「パラメーターの入力」タブ: バックテストで良かった設定値を入力する。
- マジックナンバー: 複数のEAを同時に動かす場合は、必ず異なる番号を設定する。
3. 稼働開始
- MT4上部の 「自動売買」 ボタンをクリックし、アイコンを 緑色 にする。
- チャート右上の顔マークが 「ニコちゃんマーク(笑顔)」 になっていれば稼働成功です。
第6章:よくあるトラブルと解決策

開発中によく遭遇するエラーとその対処法です。
Q1. バックテストでグラフが出ない(取引しない)
- 原因A:過去データがない。
- 対処:チャートで「Home」キーを長押しして過去データを読み込む。
- 原因B:スプレッド負けしている。
- 対処:テスト設定の「スプレッド」を小さく(例:10)固定してみる。
Q2. エラーコード「134」または「not enough money」が出る
- 原因:証拠金不足。
- 対処:テスト設定の「初期証拠金」を増やす(例:10000 → 1000000)。
Q3. 利益が増えない(レバレッジ規制)
- 原因:資金に対してロット数が大きすぎて、国内のレバレッジ25倍規制に引っかかっている。
- 対処:プログラム内のリスク設定(%)を下げる。
以上が、MT4でEA開発から運用までを行う一連の流れです。
この手順に沿って進めれば、誰でも「自分だけの自動売買システム」を構築することが可能です。

